~~~~~ <参考記事> ~~~~~
米子東のベスト4入り(1956年夏)の原動力となったエース「長島康夫」投手について
高校野球の食トレについて。2019年秋の米子東の福島悠高選手の事例など
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鳥飼です。
今回は、2019年春の選抜に出場がほぼ確実と言われている米子東(よなごひがし)(※)について書いていきます。まだ12月の段階であり、正式に出場が決まっていないので気が早いですが、どうしても気になりますからね。
※…米子東の2019年選抜甲子園出場が正式に決定しました!!(2019年1月25日情報)
で、僕の予想ですが、「1勝」は十分、できると思います。ただ、「2勝」は厳しいかも・・・
です。
1勝できると思う理由と、2勝は厳しいと思う理由。それぞれ、書いていきますね。
~~~ 目次 ~~~
米子東が選抜で1勝できると思う理由① 米子東は、選抜に強いから
選抜といえば米子東、米子東といえば選抜です。
僕の世代(団塊ジュニア)からすると記憶はありませんが、1960年前後は、米子東は選抜で好成績を収めています。準優勝もしています。
つまり、米子東は選抜には強いという、「縁起がいい」要素があるのです。
なので、そういう「目に見えない力」の後押しは、十分、勝利にプラスになります。
もちろん、「そんなの、なんの根拠にもならない」という意見もあるでしょうが、勝負事というものは、けっこう、こういう部分が関係してきます。
たとえば・・・
僕の知人の、テニスの試合予想が当たる人の例
僕の知人で、テニスの勝敗を予想するのが趣味の人がいます。
(正確にいうと、その人はそれで収益も得ています。が、あまり深く書くのはここでは控えます。海外を拠点に活動しているので、まあ書いても問題ないとは思いますが)
で、その人は本当に予想がよく当たるのですが、いったい何を根拠に予想しているか、というと、まさに「目に見えない力」なのです。
たとえば、選手の家族の誕生日に注目したり、試合の日付が、過去その選手にとって何か「縁起のいい日付なのかどうか」などです。他には、試合会場とその選手の相性なども見ています。
もちろん、選手の過去の成績など、細かいことは数字としてネット上で発表されています。なので、普通の人はその数字だけを見て、勝敗を予想します。
しかし、その人の場合は、それら数字はもちろん見た上で、最終的な結論は、「目に見えない部分」をかなり大事にして予想しているのです。
それで試合結果を次々と的中させているのですから、米子東の場合も選抜においては「目に見えない力」を持っていることは有利と言えるでしょう。
米子東が選抜で1勝できると思う理由② 鳥取県勢は、夏より春に強いから
これは、後の記事でも詳しく触れる予定ですが、鳥取県代表は夏よりも春に強い傾向があります。
米子東の準優勝、倉吉北のベスト4は春の選抜です。また、鳥取県勢が最後に2勝したのも、春の選抜です(1988年春・倉吉東)。
もちろん、春の選抜に出場すること自体、鳥取県勢はほとんどありません。たいてい、秋の中国大会で負けてしまいますからね。でも、いったん、出場が決まったら、善戦する傾向があるのです。
その理由は、僕が思うに2つあります。
鳥取県代表が春に善戦する理由① 春は全国のチームと差がついていないから
まずひとつ目は、春の選抜は、全国の出場校はチームがまだ出来上がっていないことがあげられます。つまり、ピークは夏の選手権なので、たとえ強豪校といえども、春の時点ではまだ伸びる途中の段階なのです。
そのため、鳥取県のチームと大きく差がついているわけではありません。
もちろん、それでもやはり、鳥取県のチームは力が劣る傾向にはあります。しかし、ここで重要なのは、春の大会はあくまで「地域選抜」という点です。
つまり、あまりにも力の劣るチームは、中国大会の時点で落とされるのです。逆をいえば、中国大会を勝ち上がって甲子園に選抜された時点で、「力がある」チームばかりが揃うわけですね。
夏の大会だと、鳥取の場合、むしろ県内の有力チームが徹底的に研究されて、ダークホースが甲子園に出場するというケースが多いです。つまり「力の劣るチームが甲子園に出る」ということがしばしばあります。
なので、鳥取のチームは夏ではいい所がなく敗北してしまうことが多いです。
しかし、春の選抜では、そういうチームは最初から排除されて、「力のあるチーム」だけが鳥取県代表として残っていきます。
それに加えて、春の時点では全国の強豪と大きく差がついていないわけですから、十分、鳥取のチームは勝てるチャンスがあるというわけです。
鳥取県代表が春に善戦する理由② 準備期間が多く取れるから
僕を含め、鳥取県の夏の予選を見ている人は毎年、思うことがあります。それは、「日程が遅い」ことです。つまり、代表が甲子園本番前のギリギリの時期に決まります。
なぜ、鳥取県高野連がそういう日程を組んでいるかは謎ですが、いずれにしても、この「ギリギリの日程」は、夏で勝てない理由のひとつだと僕は思っています。
なぜなら、日数が少なすぎて準備ができないからです。夏の予選はあり得ないくらいの暑さの中、開催されますから、疲労もかなりたまっています。
鳥取の代表はその疲労が取れることなく、戦術の修正もできないまま、夏の本番に臨んでいます。これでは、条件として不利ですよね?
その点、春の選抜は、準備期間は全国のチームと同じです。出場校は同じ日にいっせいに発表されますからね。
なので、夏と比べて、「準備期間」は他県のチームと差があるわけではありません。だから、鳥取県勢はたっぷりと準備を行った上で甲子園本番に臨むことができるのです。つまり、善戦できるわけですね。
米子東が選抜で1勝できると思う理由③ 一点集中の強さ
今季(2018年秋)の米子東は、一点集中の強さがあります。そのことを説明する前に、まず前提知識を確認しておきましょう。
米子東野球部は、実績があるものの、近年は低迷している
米子東は鳥取県内では最多の選抜出場数(8回。春夏通算21回)を誇り、ベスト8、ベスト4、準優勝も経験しています。
しかし、1996年の選抜以降、低迷が続いています。鳥取県内で上位に行くことさえなく、夏の予選で米子東が初戦敗退しても、もはや誰も驚かないという状況が続いていました。
最後に甲子園に出場したのは1996年春です。なので、2018年現役の鳥取の高校球児は米子東の活躍を全く知らないわけです。僕のような団塊ジュニア世代からすれば、「米子東といえば甲子園」とすぐに結び付きますが、今の世代は「米子東といえば鳥取予選で負ける高校。甲子園なんて考えられない」というイメージがついています。
10歳ごろから野球を真剣に見始めると考えた場合、米子東の最後の甲子園出場の1996年時点で10歳だった人は、今、32歳です。なので、少なくとも32歳以下の人にとって、米子東と甲子園は結び付いていないのです。
当然、そうなると部員数も減ってきます。さらに、米子東高校自体も、野球部に協力的ではなくなってきているという情報もあります。なので、野球部が強くなる要素がどんどん、減っていっているのが今の米子東高校の野球部の状況です。
弱者の戦略(ランチェスター戦略)
さて、そのような状況の中、今季(2018年秋)の米子東の野球部はなぜ、中国大会で準優勝できたのでしょうか。そのポイントは、「弱者の戦略(ランチェスター戦略)」だと僕は見ています。
後に詳しく書きますが、弱者の戦略(ランチェスター戦略)とは、大事なことだけにポイントを絞ってそこに力を集中させていく戦い方です。
先に書いたとおり、米子東はかつては県内の強豪でした。しかし、上記のとおり少なくとも32歳以下の人にとっては全くそういうイメージがありません。ただ、野球部を支援する人たちは、年輩の方がほとんどです。それは、2017年に久しぶりに夏の県大会の決勝に残ったときの観客席を見れば明らかです(年輩の人が多かった)。
また、米子東のOBは応援サイトを立ち上げてなんとか古豪・米子東復活を願っています。ただ、どうしても、「かつての強い米子東」のイメージを追ってしまっている雰囲気はあります。
そういう状況だと、実際はすでに「弱者」になってしまっているにも関わらず、現場のスタッフもチーム作りでどうしても「強者の戦略」を意識してしまいます。別の言い方をすれば、「プライドを捨てきれない」ということです。
今季(2018年秋)の米子東は、部員がたったの16人
そうした「プライド」がどうしても頭をよぎってしまう状況の中、今季の米子東は部員がたったの16人です。さらに、甲子園から遠ざかって22年も経ってしまっているという現状です。
このような状況になると、さすがに「プライド」うんぬんは言ってられないでしょう。さらに、監督は若い感覚を持った紙本康由氏です。年齢は、37歳。古豪野球部の監督としては若い部類に入ります。
紙本監督は、風貌やインタビューの内容を見る限り、新しい考えの持ち主です。古豪としての米子東ではなく、新しい米子東野球を作っていこうとしていることがうかがえます。食トレを計画的に取り入れて選手の体格を全国レベルに引き上げ、また「日本一」を目標に掲げていることなど、今までの米子東にはない考えを持っています。
かつての米子東は、「日本一」を目標には掲げてはいなかった
米子東は県内では古豪として実績がありますが、あまり「日本一」を目標にはしてきませんでした。これは、かつてベスト4に入った時のエース・長嶋康夫氏、準優勝したときのエース・宮本洋二郎氏(広島カープスカウト)も述べていることです。
悪い言い方をすれば、あくまで「山陰の中で強豪であればいい」という、鳥取的な考えが米子東野球部の基本路線です。
そういう意味では、体格を全国レベルに近づけようとしたり、日本一を目標に掲げたりしている紙本監督の考えは、今までの米子東とは違うと見ていいでしょう。
打てない球は捨てるという方針
2018年秋の米子東のチーム方針は、「何かを捨てる勇気を」です。たとえば、打者は難しいボールは捨てて、打てる球だけ狙っていくとのことです。
また、練習時間は一日3時間しか取れないということなので、できることも限られてきます。こういう状況では、練習内容を取捨選択し、本当に重要なことに力を注ぐしかありません。
しかし、見方によっては、これは好条件と言えます。なぜなら、「迷い」がなくなるからです。
選択肢が少ないことは、いいこと
たとえば、勉強するときに参考書がたくさんあればいいか、というとそうではありません。むしろ、1冊しかない方が迷いがなくなって集中できます。
同じく、大学受験で浪人すれば勉強に気合が入るか、というとそうとも限りません。浪人すると時間が膨大にあるので、緊張感がなくなって、かえって勉強の質が落ちることは、よくある話です。
米子東は、部員数も練習時間も少ないという状況です。しかし、考え方しだいでは、これをメリットにすることは可能なのです。
弱者の戦略(ランチェスター戦略)とは?
上でも軽く触れましたが、これは、ビジネスの世界では「ランチェスター戦略」と呼ばれます。別名、「弱者の戦略」です。これはどういう意味か、というと・・・
たとえば、ビジネスの世界で強いのは、「大手企業」です。大手企業は、莫大な資金を投入して、大きなビジネスを展開します。では、小さな起業は大手企業に必ず負けるのか、というと、そうではありません。
小さな企業には、大手企業にはない戦略を取ることができるのです。それは、「一点集中」です。
たとえば、「文房具店」ということでいえば、大手企業の場合は文房具の種類をたくさん揃えます。しかし、たくさんの種類がある一方で「深さ」はありません。なぜなら、深さまで追求してしまうと、きりがなくなってしまうからです。
その点、小さな企業なら、深さが追求できます。なぜなら、どうせ資金が少ないのですから、ならばせめて「深さ」を追求しよう、と割り切ることができるからです。
鳥取市の万年筆専門店「万年筆博士」
ランチェスター戦略で成功しているお店の例が、鳥取市の「万年筆博士」です。この店はあくまで「万年筆」の専門店であり、文房具の種類をたくさんそろえているわけではありません。しかし、「万年筆」という狭い一点においては、大手企業を圧倒する品質のものを提供しています。
こうして見た場合、今の米子東は部員が少なく、練習時間も多く取れないという状況です。でも、それがかえって「じゃ、一点集中しかないよね」と割り切ることができる環境にあるといえます。
一方、全国の強豪校は、悪い言い方をすれば、たくさんの部員と、膨大な練習時間があるがゆえに、「迷い」が生じてしまう可能性があります。その「迷い」のスキをつくことができれば、米子東は一点集中で勝利することができるでしょう。
鳥取市の万年筆専門工房「万年筆博士」のサイトをご紹介
参考までに、以下、鳥取市の万年筆博士のサイトです。完全オーダーメイドです。目ん玉が飛び出るような高価な値段ですがそれでも大人気で、予約が埋まっています。現在、予約しても15ヶ月待ちだそうです。
大手の文房具専門店にはできない芸当ですね。一点集中しすぎです。
米子東は、「2勝以上」はできるか?
さて、では2勝以上はできるかどうか、ですが・・・
ハマれば、できると思います。しかし、普通に考えれば、勝てたとしても1勝が限界かなという気がします。理由としては、軟式出身者が多いという点、そして、1年生(来春は2年生)が多いという点です。
もし、硬式出身でしかも経験豊富な2年生が多ければ、一点集中すればかなりのパワーになるとはっきりと言うことができます。が、米子東の今の状況を見ると、甲子園で1勝するだけのパワーは出せても、その先まで行けるか、というと、僕にはちょっと想像ができない感じです。
でも、勝負事ですから、何が起こるかはわかりません。何よりも、紙本監督が「日本一」を掲げている人だというところに、僕は希望を持ちたいと思います。
過去を思い出せば、全く期待されていなかったチームが躍進することは何度もありました。2018年の金足農業もそうでしたし、僕の中で衝撃だったのは、やはり2007年夏の佐賀北ですね。
ほぼ全ての野球情報誌が最低ランクをつけ、初戦敗退確実といわれていたにも関わらず、全国制覇してしまった衝撃・・・
しかもあのときの佐賀北は、延長戦もやってますし、引き分け再試合もやっていますから、他のチームより余計にイニング数が多く、試合数も多くこなしています。試合相手も強豪ばかりでした(帝京など)。
なので、米子東にも、十分にチャンスはあります。ましてや、米子東はもともと、選抜に強いのですから!
ぜひ、期待しましょう!