甲子園で鳥取代表が弱い理由④ バントがうまくない

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どうも、鳥飼です。甲子園でなぜ鳥取県代表はいつも初戦敗退なのか・・・
鳥取県人として考えるという主旨で記事を書かせていただいています。

さて、今回は、「鳥取代表は、バントがうまくない」という問題についてです。これは、鳥取代表がいつも負けてしまう原因の、かなりの部分を占めていると個人的には思っています。

なお、便宜上、「バントがうまくない」というタイトルをつけましたが、鳥取代表はバントに限らず、小技がうまくありません。なので、「小技全般がうまくない」という意味でとらえていただけたら、と思います。

鳥取代表の「売り」は、「スモールベースボール」

鳥取県のチームは毎年、スモールベースボールを特徴としたチームを作ってきます。もちろん、それ自体は問題ありません。スモールベースボールだって立派な戦術です。

ただ、鳥取代表の場合、その「スモールベースボールの精度」が高くないのです。県大会では通用しても、甲子園では通用しない、というレベルですね。

鳥取代表の試合を毎年見ている人は、以下のことを感じるはずです。まさに、鳥取代表の試合の「あるある」です。

・回の先頭に、打者(鳥取)がクリーンヒットを放つ(鳥取県民、テレビの前でガッツポーズ)。
・これで流れが鳥取に行きかける。
・でも、次の打者がバントでファウル。
・再度バントに挑戦するも、フライを上げてアウト。
・次の打者も、バントに挑戦。またアウト。
・仕方なく、次の打者はヒッティングを狙う。
・空振り三振。チェンジ(鳥取県民、テレビの前で言う「何やっとっだいや!」)。

です。もう、毎年、「テレビ局は同じVTRを流してるのか?」っていうくらい、繰り返されるパターンです。それに対して、相手チームはきっちりとバントを決めてきます。で、その送った走者がホームインして得点につながります。

つまり、「スモールベースボールが売り」のはずの鳥取代表がバントで失敗して、「打ちまくる戦術(ビッグボール)が売り」の相手チームの方が、むしろバントをきっちり決めてくるわけです。

これでは、鳥取代表の面目が丸つぶれですよね。「自分たちのお家芸」を相手にされてしまうのですから。心理的に追い詰められます。なので、勝利が遠のいていくのです。

そして、バントだけでなく、走塁や牽制など、細かい技をことごとく鳥取代表は失敗してしまいます。

スモールベースボールというものは、大きなヒットを打たないかわりに、緻密な戦術で得点していく野球ですよね? だから、緻密な戦術を成功させるためには、小技や連係プレーが大事なんです。そこでミスをしてしまっては全く意味がないんですね。

「バント、小技を失敗してしまう問題」の解決法とは?

その解決法ですが、僕はこう思います。ズバり、

「スモールベースボールをやらない」

です。今の鳥取球界の雰囲気のままスモールベースボールを目指すと、どんどんプレーが小さくります。年ごとに進化するのではなく、退化してしまいます。だからいっそ、スモールベースボールなんか捨ててしまって、長打を連発する野球を目指していくべきだと僕は思います。

そもそも、スモールベースボールというのは、力のあるチームが使うからこそ有効なんです。つまり、「本来はパワーがあり、長打を狙えるチーム」が、方針としてあえて行うのがスモールベースボールなんです。

2012年、原辰徳監督時代の巨人のスモールベースボールこそ、本物。

たとえば、僕が思い出すのは、2012年の原辰徳監督の巨人です。これは強烈に覚えています。

この年の巨人は、開幕から連敗が続き、4月の時点で「優勝できない」と誰もが思いました。しかし、途中で「緻密な野球」に変更して持ち直し、むしろ他チームを圧倒して優勝しました。その野球の「いやらしさ」は相当なものでした。

僕の記憶だと、この年の巨人はほとんどのゲームで3点ぐらいしか取っていません。なんというか・・・見ていて不思議に思いましたね。それで勝ててしまうというのが。

あなたもお存じのとおり、高年俸の選手をそろえているのが巨人です。なぜ高年俸かというと、「ガンガン打って欲しいから」です。ちまちました野球をするために高い年俸は払いません。にもかかわらず、2012年の巨人は「ありえないくらいの貧打」でした。

なので、主軸にもバントをさせてましたね。阿部慎之助、村田修一、高橋由伸といった選手にもですよ!

で、走塁で揺さぶり、相手をじわじわと心理的に追い詰め、自滅するのを待つ。およそ巨人とは思えない戦術で戦っていました。

それは当時、野球評論家の江本孟紀氏が揶揄していたほどです。「原はスカっとした男だと思っていたが、こんなにネチネチした一面もあったのか」と。

これほどまでに、絶望的なまでに「貧打」なのに、なぜか試合は優勢に進められて、終わってみると「勝っている」。

それが、2012年の原巨人でした。

なぜ、2012年の原巨人は、「スモールベースボール」をうまく使えたのか

2012年の原巨人は、スモールベースボールを徹底していました。
それがうまくできた理由は、「選手の本来のレベルが高かったから」だと僕は思っています。

つまり、「本来なら、長打を連発できるんだけど、たまたま選手たちが絶不調に陥っている。だから、スモールベースボールをやる」という状況だったわけです。

「長打を打てないから仕方なくスモールベースボールをやる」のではないんですね。やはり、そこには「心の余裕」が出てきます。「調子さえもどれば、いつでも長打を連発してやるさ」という余裕です。

たとえば、あなたが「お笑い芸人」だったとします。

たとえば、あなたが「お笑い芸人」だったとします。

で、「いろんな芸ができるかなりレベルの高い芸人」だけど、たまたま風邪を引いていて、声にハリがなかったとします。そんなときは、いつものように「いろんな芸」で観客を楽しませることができません。

だから、「まあ、今日は体調悪いから、一発芸でウケを狙おう

と考えて、「一発芸」を客の前で披露したとします。これは、大ウケするでしょう。なぜなら、普段はいろんな芸ができる人が、心の余裕を持ってひとつにしぼった「一発芸」をやるからです。

そもそも、一発芸は立派な「お笑いの方法論」ですから、それを「心の余裕」を持った人がやれば、十分に通じるのです。

もし、一発芸しかできないなら・・・

しかし、もしあなたが、最初から「一発芸」しかできないとしたらどうでしょうか?
「これでスベったらどうしよう・・・」というド緊張状態で芸を披露することになります。

そういう「心の余裕」がない状態でする芸は、たいてい、サムいものになりますよね?

こう考えると、2012年の原巨人が行ったスモールベースボールは、まさに「心の余裕」がある状態でやったからこそ、効果が大きかったのです。

鳥取代表のスモールベースボールは後ろ向き

ところが、鳥取代表の場合は後ろ向きな、以下の理由でスモールベースボールが行われます。

・理由① 長打を打てる選手がいないから
・理由② スモールベースボールが鳥取の予選ではかなり有効だから

です。総じていうと、「心の余裕がない状態」で行うスモールベースボールですから、全国ではなかなか通用しません。そこのところを、この項では掘り下げて考えててみます。

スモールベースボールをやる理由① 長打を打てる選手がいないから

鳥取には長打を打つ選手が少ないです。僕は子供の頃から鳥取代表の甲子園の試合はほとんど見てきましたが、「目の覚めるようなホームラン」というのはあまり記憶にありません。

まぐれっぽかったり、「フェンスすれすれ」で入ったりするようなホームランばかりですね。

ちなみに鳥取代表でスカっとするホームランで思い出すのは・・・

1987年夏 八頭(やず)vs金沢 綾木進一選手・・・強烈な当たりでした。有名な「原辰徳のバット投げの一発」の軌道にそっくりでした(ただし、”原のバット投げ”は1992年なので、それより前です。原さんは、”バット投げ”のときに限らず、総じて同じような軌道でホームランを放っていました)。
2006年夏 倉吉北vs松代 本川翔太選手・・・左打者。コン、と当てたような打球がグングン伸び、バックスクリーンに消えました。左打者でバックスクリーンですよ?かなり衝撃を受けたのを覚えています(しかも倉吉北は大阪の選手が多い中、本川選手は鳥取人。倉吉っ子。7番打者、超イケメン。今は舞台俳優)。
2008年夏 鳥取西vs木更津総合 小畑彰宏選手・・・強引にすくい上げる、プロっぽいホームランでした。僕の記憶では強烈さで鳥取県歴代1位です。小畑選手は後に青山学院→大阪ガスへと進み、2015年の都市対抗野球でエースとして活躍し、準優勝しました。ちなみに大阪ガスは鳥取城北の能見篤史投手(阪神)がかつて所属していたチームのため、なんとなく鳥取の野球ファンにはなじみが深いチームです。

僕の記憶ではこの3本のみです。強いてあげれば1996年の「米子東vs釜石南」での太田優選手の満塁ホームランも「スカっと度」ではかなりのものでした(初回でしたし)。ただ、それは「満塁弾」ということで僕の記憶で感動が盛られてます。当たりそのものは通常に近いホームランという感じでした。

いずれにしても、鳥取の打者には「スカっとするプロっぽいホームラン」がほとんど見られません。

他県のチームは、数年に一度は「強烈なホームラン」が飛び出る

一方、他県の場合、3年に一度くらいは「強烈なホームラン」があります。それどころか、「プロ注目のスラッガー」も出てきます。

でも、鳥取ではそういう人もいません。

鳥取の選手で「プロ注目」といえば、出てきたとしても投手です。打者は僕が記憶する限りではゼロです。2015年の布袋翔太選手(鳥取城北)が地方大会で騒がれましたが、甲子園では力が発揮できませんでした。

以前の記事にも書きましたが、八頭(やず)高校を監督として何度も甲子園に導いた名将・徳永昌平氏も、

「鳥取には、スラッガーがいない。長打を打つ打者を並べることができない」

とインタビューで語っています。だから、どうしても「スモールベースボール」をせざるを得ないという面はあるでしょう。しかし、僕は別の記事でも語ったとおり、鳥取の選手の才能が他県の選手より劣っているとは思いません。むしろ、運動神経抜群な人はたくさんいます。

たとえば・・・

僕が鳥取で見た、運動神経抜群な人

僕の知人の野球部員にも、野球どころかサッカー、バスケ、陸上競技、と何をやっても激ウマな人がいました。特に、バスケはバスケ部員よりも相当ウマかったですね。

ところが、その人は野球ということになると「普通の鳥取の有力選手」におさまっていました。もちろん、「有力選手」ですからかなりうまいですよ。打球のスピードも鳥取の選手にしては強烈でした。

しかし、あくまで「鳥取の選手にしては」という言葉をつけなければならないレベルでもありました。全国のスラッガーと比べると明らかに見劣りしました。その人は甲子園には出ませんでしたが、おそらく甲子園に出ても「普通の打者」という印象にとどまったでしょう。

こう考えると、鳥取県でスラッガーが生まれないのは、「才能がないから」ではないような気がします。何せ、僕の例で出したような「運動神経抜群な人」も、「普通の選手」になってしまうのですから。

指導の仕方、もっとさかのぼって中学軟式野球から改革する必要があるのではないでしょうか。もちろん、硬式リーグのチームの充実も望まれるところです。

才能を発揮できずに、スモールベースボールの枠におさまってしまっている選手たち

このように、鳥取の選手は才能があり、長打を量産できる潜在能力は十分にあるのに、2018年現在ではそれが発揮できていません。

才能のある選手たちが、指導者から一方的に「この子たちではビッグボール(長打野球)は無理だ。だからスモールベースボールをやろう」と決められてしまっています。

もちろん、長打を連発する野球なんてものは、そう簡単にはできません。長期間かかります。しかし、たとえ完成するのが夏の本番の直前でもいいと思います。最悪、「長打チーム」を目指すがあまり、夏に間に合わず、予選を突破できなかったとしても、ノウハウは残ります。

なので、後輩にそのノウハウをつなぐことができます。で、後輩たちは退化ではなく、確実に進化し、よりビッグボールに近づいたチームができるでしょう。

そうなれば、精神的に余裕ができますから、いざ、スモールベースボールをやってみても、うまくいきます。すでに述べたとおり、スモールベースボールは「長打が打てないから仕方なく」やるものではありません。「長打が打てるチームが、あえて戦術として取り入れるもの」です。

なので、チームの成長の過程で一度は「長打のチーム」を目指す必要があると僕は思います。

「スモールベースボールをやる理由① 鳥取の予選ではスモールベースボールがかなり有効だから

僕は、鳥取県の予選を見ていてよく思うことがあります。それは、

「鳥取のチームは、スモールベースボールに弱いなぁ」

ということです。

実は、鳥取にも長打をからめる「ビッグボール」で勝負するチームはあります。そういうチームは、本格派の四番打者がいたり、ストレートの早い右腕がいたりします。力と力の勝負を望むようなチームです。

でも、鳥取の場合、そのようなチームの完成度は、いまいちなのです。だから、「スモールベースボール」を仕掛けられたら、あっさりと負けてしまいます。

鳥取の予選を見ていると感じる「あるある」のひとつに、

「スカウトが注目する選手がいるチームは、予選で負ける」

というのがあります。これは、毎年、鳥取の予選を見ている人ならわかりますよね?

本格派の4番や、ストレートの速い右腕は、けっこう、鳥取にもいたりします。なかには、野球雑誌で「注目の選手」として掲載されている場合もあります。

しかし、その選手を擁するチームはほぼ確実に鳥取県予選で負けます。ひどい場合は、ダークホースのチームに初戦で負けたりします。で、僕ら鳥取野球のファンはがっかりするんですよね。

しかも、そういうところを倒して甲子園に出るチームは、「スモールベースボール」をするチームだったりします。

で、甲子園の試合では、そのチームはバントや盗塁をことごとく失敗します。かといって長打はもともと打てませんから、「意地の一発」とか「一矢報いる大ホームラン」などの見せ場もなく、敗れ去ります。

「こんな試合になるなら、途中で負けたあの”本格打者”がいるチームに出てほしかった・・・」

僕は、そんな風に思うこともしばしばです。たとえ負けても、「胸のすくような一発」を見せてくれたら、「いい試合を見た」と思えるのですが・・・そういうこともなく、見せ場が全くないまま試合が終わるので、見る方としてはいつもがっかりとするのです。

野球としての王道スタイルを目指すべき

このように、鳥取県の予選では、「スモールベースボール」が非常に有効なのです。話題の選手がいるチームの足元をすくって勝ち上がることができます。

なので、監督・コーチとしても、この「有効な手段」を使わない手はないのでしょう。

でも、いくら「スモールベースボール」が鳥取県予選で有効だからといって、その方向ばかり追求してしまっては、個人個人の力が上がっていきません。

鳥取県出身のプロ野球選手が圧倒的に少ないのも、そういうことが関係していると僕は見ています。

やはり、僕は野球としての王道スタイルを基本に置くべきだと思います。つまり、「投手はストレートの迫力で抑える」「打者は、長打を連発する」というスタイルですね。

個人個人がこの技術で自信をつけた上でなら、スモールベースボールをあえて取り入れてみるのもいいでしょう。しかし、最初からスモールベースボールを目指してしまうのは、野球における「大事な何か」を見失ってしまっているような気がしてなりません。

今回の記事のまとめ+α

鳥取の選手は、十分に長打を飛ばせる才能があります。記事を書いている途中に懐かしくなって、ネット上で過去の鳥取の試合の動画を探してみました。

この記事で紹介した、八頭の綾木進一選手と倉吉北の本川翔太選手のホームランは見ることができました。鳥取西の小畑彰宏選手の動画はありませんでしたが・・・

(鳥取西の小畑選手のホームラン動画もありました。後の記事でご紹介します)

八頭の綾木選手のホームランは、今見ると、弾丸ライナーという感じですね。僕の記憶の中では「原辰徳のバット投げ」のような感じと思ったのですが、それよりはライナー気味でした。当たりは強烈ですね。

そして、本川翔太選手のホームラン。これはバッチリ、記憶と同じでした。高校生の左打者で「強烈な当たり」といえば松井秀喜選手(石川・星稜)とか瀬間仲ノルベルト選手(宮崎・日章学園)を思い出しますが、本川選手の当たりも全然負けてないですよ。

ちなみに、本川選手のホームランは、youtubeで「第88回全国高等学校野球選手権大会本塁打集(準々決勝まで)」というタイトル動画で見れます。その動画の1分20秒くらいからです。

ついでに言うと、youtubeでは本川選手の現在の活動も見れますね。舞台俳優です。かな~りのイケメン&イケボです。正直、今、「イケメン俳優」と言われている人よりはイケメンですよ。なんというか、彫りが深いけどあっさりしている、という感じですね。何年か前にブログで見たときは「コスメ男子」っぽい弱々しい感じになっていて「本川選手って、こんな感じだったっけ?」とびっくりしたもんですが・・・

でも今は高校球児時代の精悍な感じに戻っています。「イケメン、長身、イケボ、マッチョ」で、さらに「甲子園の元アーチスト(しかもバックスクリーン)」ということになると、はっきり言ってその辺の俳優より全然いい条件ですよね。なので、舞台だけでなく映画とかにもどんどん、進出してほしいもんです。

・・・ちょっと、話がズレましたが、要するに、鳥取の選手は長打を打てないということはないわけです。なので、スモールベースボールはいったん置いて、才能をガンガン伸ばして、長打を連発する野球を目指してほしいな、と鳥取野球のファンとしては願うところです。

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