お隣、島根県の開星高校(野々村直通監督時代)が経験した、「選抜候補取り消し」トラブル

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どうも。鳥飼です。

2018年11月現在、米子東(よなごひがし)高校が、鳥取県内でちょっとした話題になっています。

というのも、秋の中国大会で準優勝しましたからね。つまり、来春の甲子園選抜大会に「ほぼ出場確定」という状態なのです()。

※…米子東の2019年選抜甲子園出場が正式に決定しました!!(2019年1月25日情報)

米子東の選手たちには、ケガだけには注意してもらって、しっかりと準備してもらいたいな、と思います。僕も、鳥取野球ファンの一人として、順調に選ばれるように、本当に祈るような気持ちです。

そういうことから、今回から何回かに分けて、米子東や、選抜に関することをとりあげてみます。米子東に関しては、1956年に甲子園を沸かせた「長島康夫」投手について書く予定です。

「選抜」にまつわるトラブル

で、今回は、「選抜」に関してひとつお題をとりあげてみます。それは、「選抜出場にまつわるトラブル」です。

それは、お隣、島根県の開星高校で起きたトラブルです。僕は、このトラブルは高野連との意思疎通がしっかりとできていなかったから起こったと思っています。

なので、米子東の関係者さまにおかれましては、同じようになんらかのトラブルに巻き込まれないよう、注意していただけたら、と思います。

特に、大事な連絡事項は念を押して2回、高野連に伝えるくらいのことは必要かな、と思います。

1998年、お隣、島根県の開星高校で起きた選抜出場のトラブルとは?

1998年、開星高校は秋の中国大会で優勝しました。でも、選抜甲子園には出場できなかったんですね。それは、転校してきた選手がいたから、というのが理由です。選抜候補から外されたんですね。

僕も当時の報道をよく覚えていますが、「選手が転校してきたこと」がまるで開星高校が他校から引き抜いたかのように言われていました。しかし、実際はそうとも言い切れない部分がかなりあります。

ちなみに、そのときの開星高校の監督は野々村直通氏です。後に、「21世紀枠に負けたのは末代までの恥」発言で有名になる人ですね。

野々村直通氏の著書にもこのことが詳しく書かれています。

ここでは、野々村氏の著書などを参考にしながら、「1998年の開星高校の選抜出場にまつわるトラブル」の経緯を書きますね。

開星高校の選抜甲子園出場にまつわるトラブルの経緯

1998年春、埼玉県の某高校から、2年生野球部員が二人、転校してきました。

その部員は、開星が引き抜いたわけではありません。転校してきた理由を今、ここで書くとややこしくなるので、後述(次の記事)します。とりあえずは、「開星高校が選手を引き抜いたわけではない」ということでこの先を読み進めてください。

ここで重要なのは、高野連が定めている規定に、「転校生は、一年間、公式戦に出ることができない」というものがあることです。

つまり、開星高校に転校してきたこの2年生も、一年間は公式戦には出られないのです。

もちろん、それは開星高校も十分、わかっていました。なので、開星野球部としてはその二人の選手はあくまで練習試合には出していたものの、公式戦には出していませんでした。

転校生の親が、「高野連に申請してほしい」と開成高校に相談を持ち掛ける。

そんなことが続いたある日、転校生の親が、こんな相談をしてきました。

「松江市にマンションを買い、住所も移すので高野連に申請してみてくれないか」

と。実は、「転校生は一年間、試合に出ることはできない」というルールには、例外がいくつかあるのです。その中のひとつが、「一家転住の場合」です。つまり、親の転勤などの「やむを得ない場合」で引っ越すケースですね。

なので、親としては、「マンションを買って一家転住という形を取れば、もしかしたら一年目から公式戦の出場が認められるかもしれない」と思って、そういう相談をしてきたわけですね。

ただ、このケースは「やむを得ない場合」ではありません。なので、開星高校としては、「たとえ高野連に申請しても、おそらく認められないだろう」と思っていました。

とはいえ、野々村監督も「駄目はもともと、やるだけやってみよう」という気持ちで高野連に申請し、結果を待ちました。

すると、島根県の高野連の回答は、「引き抜き行為ではないから、選手のために善処したい」ということでした。つまり、その転校生が公式戦に出場することを許可したわけです。

思ってもいなかった回答に選手はもちろん、親も野々村監督も喜びました。

そのため、選手もそれまで以上に練習に真剣に取り組むようになりました。そして、秋の中国大会で優勝しました。

「優勝」ですから、春の選抜甲子園大会に出場できることは確実です。100%です。モチベーションはさらに高まりました。

週刊文春に「転校生の疑惑の出場」としてスクープされる

そんな喜びに包まれていた12月の中旬、「週刊文春」に”心ない投書”が届きます。投書の内容は、「中国大会に優勝した開星高校は、転校生をメンバーに加えていた」というものでした。

”心ない投書”というのは、野々村氏の著書の表現です。人によっては、「正義の告発」と見るかもしれませんが・・・どうでしょう。

その投書をした人にどういう意図があったのかは、わかりません。しかし、ただひとつ言えるのは、その投書があったことで、「週刊文春」によって一方的に「開星高校が悪者」として報道されてしまった、というこです。

島根県高野連はうまく対処をせず、開星高校に責任を丸投げしてしまいました。

これは僕の見解ですが、同じ事案でも、報道の仕方によって印象が大きく変わってきます。開星高校のケースの場合は、転校生の事情を考慮しないで報じたら、まるで開星高校が選手を引き抜いて試合に出しているかのような印象を読者に与えます。なので、報道の仕方に気を付けてもらいたかったな、と思います。

野々村直通氏の著書から引用してみます。

連日、文春の記者が学校に取材に来た。

こと細かく取材を受けたが、優秀な選手を計画的に引き抜くという悪意に満ちたものではなく、転校後に試合に出してやりたい親心から学校側から正規の申請をして、自然の流れの中で高野連も認めたということが結論であった。

「悪意がないのですから、記事にしないでいただけないでしょうか!?」

私は記者に懇願した。

記者は、

「家庭の事情による一家転住という本来の条件は満たしていないわけだから、疑惑の転校生ということで記事にします。気の毒ですが、中国大会優勝チームということですから、この記事は売れますよ」

と受話器の向こうで、冷たく言い放った。

果たして週刊誌で報じられると、トップニュースとして全国を駆け巡った。

「甲子園に出るためには、手段を選ばない私学の野球学校」

という評判が定着した。

(引用元:野々村直通著「やくざ監督と呼ばれて」)

野々村直通監督にとって、この出来事は非常にショックだったようです。「自分を野球界から追放してもいいから、選手の記録を抹消するようなことはしないでほしい」とまで高野連に懇願しました。

あのコワモテの野々村監督が激しく泣いた、ということですから、相当なショックだったんでしょう。

後に(2010年)、野々村監督は「21世紀枠に負けたのは末代までの恥」発言で世間から大バッシングされます。しかし、そのとき以上に、1998年の「優勝取り消し」事件はショックだったと、テレビ番組で述べられています。

高校野球の闇。「チクリ合戦」

野々村直通氏は、このようなことを「チクリ合戦」として批判しています。血気盛んな高校生ですから、ちょっとハメを外すこともあるでしょう。また、野々村氏が経験した例のように、「規定違反かそうでないか、微妙なケース」というのもあるでしょう。

そういう部分をあらさがしして、週刊誌や高野連に「チクる」ということが、高校野球の世界では行われているのです。

もちろん、正義の告発もある

もちろん、その中には「正義の告発」もあります。度を越した体罰などがそうですね。

たとえば、野々村直通氏は「体罰は教育に必要」という考えを持っていますが、そんな野々村氏でも、2012年、大阪市立桜宮高校で起きた体罰はひどい、と言っています。なにせ、30発以上も連続で叩き続けた、ということですから。

野球界には、なぜか度を越した体罰をする指導者が多くいるようです。もちろん、サッカーなど、他のスポーツの部活でもあることですが、野球だけはなぜか、特に多いようですね。

なので、そのあたりは保護者、市民はしっかりと判断して、度を越したものに関してはやはり告発すべきでしょう。

鳥取県にも「チクリ合戦」はあるのか?

僕個人の意見としては、鳥取県は他県に比べて「チクリ」は少ないと思います。以前の記事でも書きましたが、鳥取県民の口グセは、

「どうせ、いけん」

です。これはいい意味でも悪い意味でも作用します。いい意味だと、日常のトラブルが少なくなる、ということがあります。

つまり、友達どうしのちょっとした喧嘩や、お金の貸し借りのトラブルなどは、他県と同じくあります。でも、鳥取県民は問題化せず、あきらめるのです。

「どうせ、いけんっちゃ。訴えてもめんだーなだけだわいや。」

(翻訳:どうせ、ダメだ。訴えても面倒なことになるだけだ)

と。

僕が経験したトラブルも、「我慢しろ」とまわりから言われた

僕も、鳥取県内で日常のトラブルに巻き込まれ、我慢したことがあります。たとえば、今でも思い出すのは、僕が高校生のときに、「ある迷惑行為」をされたことです。あえてその内容は書きませんが、当時はとても悔しく思った出来事です。

で、その「ある迷惑行為」を僕にしてきたのが、いったい誰なのか、わかりませんでした。なので、学校に訴えて調べてもらいたい、と考えました。

正式に学校に訴える前に、まずは友人や先生に相談しました。

すると、「それくらい、我慢しろ。」と全員に言われたのです。その「ある迷惑行為」は、問題化すべきかどうか、微妙なラインの出来事です。人によっては問題化するでしょう。

ただ、「微妙なライン」程度のことは、あきらめろ、というのが、鳥取県民の判断基準です。

僕のそういう経験からも考えてみた場合、鳥取県民は「チクる」ということはあまりしないように思います。

高校野球でいえば、たとえば、甲子園出場が決まったチームに、実はちょっとしたグレーな部分があったとわかったとします。でも、もう、出場は決まってみんなが喜びに包まれているわけなのです。なので、「今さら水を差すようなことをしても仕方がない」と考えるのが鳥取人っぽい考えです。

鳥取県の高校野球部の、不祥事について

とはいえ、過去を見てみると、鳥取県の高校野球部にも「不祥事」はありました。警告や、特定の選手だけの処分になったケースもあれば、対外試合禁止処分になったケースもあります。

鳥取県のチームで問題になるケースというのは、「チクリ」というより、不祥事の被害者が直接、訴えたケースが多いように思います。いくら鳥取県民はおとなしいといっても、いろいろな人がいますから、問題化しようと考える人も、やはりいます。

ただ、第三者がしゃしゃり出る形、つまり「チクリ」というのは、僕の記憶する限りでは、聞いたことはありません。

鳥取県内のある高校で発覚した不祥事は、「正義の告発」

しかし、これはこのブログで後に取り上げる予定(※注)ですが、かなり前に、ある高校の野球部で連続して不祥事が発覚したことがあります。これは、第三者からの情報提供でした。

ただ、これは「正義の告発」と言ってもいいと思います。

ちなみに僕はその高校のファンですが、ファンの僕ですら、その野球部で起こったことは度を越している、と感じています。

なので、万が一、鳥取県の高校に野球留学を考えていらっしゃる保護者の方がいらっしゃいましたら、今回の記事を読んで、「鳥取県では不祥事がもみ消されるのか?」と不安に思わないでください。

度を越したものに関しては、当然ながら、いくらおとなしい鳥取県民でも、見逃しません。

次の記事では、開星高校に起こったこの「選抜候補取り消しトラブル」についての追記事項について書きます。

(注※)

その高校の不祥事を取り上げるのには、理由があります。それは、鳥取県の高校野球の歴史において、重要な分岐点になった出来事だから、というのがひとつ。

そしてもうひとつは、その不祥事を誘発したのではないか、とあらぬ疑いをかけられている高校があり、いまだに根拠のないその話をネット上で書き続けている者(おそらく1人で書いている)がいるからです。

その高校の名誉が長期にわたり棄損されている状態なので、バランスを取るためにも、取り上げる必要があると感じています。

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