高校野球の規定は大事!【多田野数人の事例など】

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高校野球の規定

鳥飼です。

鳥取県のチームが春の選抜に出場することはほとんどありません。どうしても力で劣るので、秋の中国大会で負けてしまうからです。

しかし、2019年1月現在、われわれ鳥取県の米子東(よなごひがし)高校が選抜にほぼ出場確実と言われています()。中国大会を勝ち抜き、準優勝しましたからね。

※…米子東の2019年選抜甲子園出場が正式に決定しました!!(2019年1月25日情報)

なので、鳥取県の高校野球ファンは、今、期待と不安とが入り混じりつつ、なんだかんだで「うれしい」気持ちですごしているのです。

さて、今回は、あえて、「期待と不安」のうち、「不安」の要素に注目してみます。それは、「高野連の規定に違反してしまうこと」です。最悪、出場できなくなってしまうことにもなりかねないので、野球部員だけでなく、周囲の関係者にも十分、注意していただけたら、と思い、記事を書くことにしました。

なお、過去、春の選抜に出場できなくなった事例として、お隣、島根県の開星高校の話を以前、書きました。開星高校の場合は、不祥事でもなんでもなく、本当に理不尽な理由による出場停止です。ひとことで言うと、高野連との連絡の行き違いと、写真週刊誌の冷徹な取材がもたらした出場停止です。

お隣、島根県のこととはいえ、この経緯を開星高校の元監督・野々村直通氏の本「やくざ監督と呼ばれて」で読んだときは僕は正直、怒りを覚えました。

高校野球で、気を付けなければならない規定

以下は、高野連のサイトの、規定を記したページのURLです。高校野球の関係者は、必ず一度は目を通すべきです。

日本高等学校野球連盟 憲章と規定のページ

何も知らないまま高校野球生活を送っていると、とんでもないことになる可能性があります。

たとえば、何気なくグローブを使っていても、もしかしたら規定にひっかかるかもしれません。グローブの色、刺繍の位置、ひもの色、長さなど、規定があります。

なので、公式試合の直前にそのことを知って、グローブを変えなければならない、ということもあり得ます。当然、これではエラーしやすいですよね。

中学生を練習に参加させてはいけない

また、意外と知られていないのが、「中学生を練習に参加させてはならない」という規定です。これを知らずに軽い処分を受けた指導者は、わりと多くいます。

多いパターンは、「中学生の3学期に、高校野球に早く慣れさせるために、練習に参加させる」ですね。ぶっちゃけ、僕が高校時代、これを公然と行っている高校が鳥取県内にありました。

たぶん、その高校の監督は知らなかったんでしょう。僕の知り合いの中学三年生が、何の悪びれもなく、「今から〇〇高校の練習に参加してくるけ。楽しみだわいや。」なんて言ってました(;^_^A

僕も「いってらっしゃい!」なんて言って送り出したものです・・・

ちなみにその高校は処分されてません。バレなかったんでしょうね。

僕の記憶する限りだと、90年代、倉吉北がこの規定にひっかかって、軽い処分を受けていました。

試合中のパフォーマンスも厳しく規定されている

あと、2018年の夏の甲子園で話題になった、金足農業の吉田輝星投手のパフォーマンス。あれが規定にひっかかった、ということでニュースになりましたね。

スポーツ選手にとって、「ルーティーン」とか「儀式」は大事です。たとえばラグビーの五郎丸歩選手のあの儀式は、「集中するため」に有効です。

とはいえ、自分で「ルーティーン」「儀式」を何にしようか決める前に、それが規定にひっかからないか、確認した方がいいでしょう。でないと、公式戦の本番でいきなり指摘されて、リズムを崩すことにつながってしまいます。

パフォーマンス以外の、普通のプレーにも禁止規定がある

禁止規定は、パフォーマンスだけではありません。普通にプレーしていても、そのプレーが審判から注意されてしまう可能性があります。

スポーツはメンタルでかなり左右されるので、なるべくなら審判から注意を受けることは避けたいですよね。リズムを崩しますから。

「普通のプレー」なのに高校野球では禁止とされているものはいろいろありますが、たとえば、「無駄な牽制」があります。

プロ野球では、ピッチャーが間を取るために「無駄な牽制」をすることがよくありますよね?絶対にアウトになるはずがないタイミングで投げるような牽制です。

高校野球では、これは禁止されています。なので、あまり繰り返すと注意されます。

それと、投手の遅延行為ですね。

2018年夏の鳥取城北高校の難波海斗投手がこの戦術で龍谷大平安をかなり苦しめました。遅延行為とまではいきませんが、投手の通常の高校野球チームと比べると長めの間をとって投げていましたね。

龍谷大平安の選手も、「間の取り方でリズムを崩された」とインタビューに答えています。

鳥取城北は野球部に力を入れている高校なので、当然、この規定はわかっているでしょう。なので、「間を取る」戦術を使うときも、規定に違反しないよう、十分、気を配っていたと思います。

だから、審判に注意されることなく、鳥取城北のリズムを保ったまま、強豪の龍谷大平安を苦しめることができたんですね。

チームによって使う戦術は毎年、変わってくるでしょう。個性的な戦術を使えばそれだけ高野連の規定に触れる可能性が出てきます。

なので、規定をしっかりと確認したうえで、「どのくらい個性的になれるか」のラインを把握しておくことは大事ですね。

2013年夏の甲子園で花巻東の千葉翔太選手が行った「カット打法」もダメ

あと、2013年の夏の甲子園で花巻東の千葉翔太選手が行った「カット打法」も、はっきりと禁止規定に書かれています。よく、千葉選手の件で問題になったからこの打法が禁止になった、という人がいますが、実はそうではなく、もともと禁止でした。

千葉選手は、それを知らずに行ったんですね。

高校野球規定には、以下のようにはっきりと、「カット打法」を「バント」とみなす場合がある、と書かれています。つまり、事実上の禁止です。

高校野球特別規則 (2018 年版)

8.バントの定義
バントとは、バットをスイングしないで、内野をゆるく転がるように意識的に
ミートした打球である。自分の好む投球を待つために、打者が意識的にファウルにす
るような、いわゆる“カット打法”は、そのときの打者の動作(バットをスイングし
たか否か)により、審判員がバントと判断する場合もある。 

絶対守ろう!重大な禁止規定

さて、以上にあげたいくつかは、軽い処分で済むものです。しかし、軽いでは済まされないものもあります。

たとえば、体罰やいじめなどですね。これは対外試合禁止処分につながります。なお、かつては野球部以外の、一般生徒が起こした不祥事であっても、野球部が重い処分が下されることもありました。が、今はさすがにそこまで厳しくはありません。

とはいえ、野球部が甲子園に出場が決定した高校は、一般生徒もハメをはずして不祥事を起こさないよう、注意した方がいいでしょう。

なぜなら、今はネットで拡散されてしまう時代ですから。もし、一般生徒が不祥事を起こせば、「これって、今度、甲子園に出る〇〇高校の生徒でしょ?」ということネタにされてしまう可能性があります。

つまり、甲子園に出るこということは、本来なら名誉なことのはずなのに、甲子園に出たために、拡散するはずじゃなかった「一般生徒の不祥事」が広がってしまう可能性があるのです。

なので、甲子園に出場が決まった高校は、一般生徒も含めて、ハメを外すことはやめた方がいいでしょう。

超重要!プロ・アマ規定

また、プロ・アマ規定。これも大事です。

プロ野球関係者は、高校球児と接触してはいけません。たとえば、野球教室を高校球児に行うことは完全にアウトです(中学生ならOK)。

いや、野球教室どころか、「ちょっと野球を教える」程度でもダメです。これは、出場停止につながる重大なことです。

たとえ、その高校の野球部の出身者であっても、ダメです。たとえば、鳥取城北出身の能見篤史選手が、鳥取に寄ったついでに母校に立ち寄り、練習に参加するのはダメなんです。

最近は少しゆるくなって、その高校の出身者であれば、「一緒にランニングする」程度のことは認められていますが、少なくとも「野球を教える」のはアウトです。

これは、過去にプロと高校球児の間でスカウティング活動が行われ、問題になったことが原因です。

僕個人的には、こんな規定はおかしいと思っています。たとえばサッカーは、Jリーガーが高校生と一緒によく練習していますよね?そういうことが、野球の競技人口を増やすことにつながるはずです。

しかし、現時点では禁止されているので、十分に注意しましょう。

参考までに、高野連の規定部分から抜粋します。

第1条 以下の各項に該当するものは、高等学校野球部員としての資格を失う。従って、在学中に学校を代表するチームに加わって、試合をすることはできない。以下プロ野球団とは国内だけではなく、外国のプロ野球団をも含む。
(1) 当該年度のプロ野球新人選択会議(以下ドラフトという)で交渉権確定以前に、プロ野球団と正式に契約を結んだもの。
(2) ドラフト以前に、正式の契約でなくとも、書類により、本人もしくは親権者がプロ野球団に入団の約束をしたもの。
(3) いかなる名目であっても、プロ野球団またはその関係者より直接、間接を問わず金品を受けたもの。親権者が受けた場合も含む。
(4) 正式入団契約以前に、プロ野球団のコーチを受けたり、練習または試合に参加したもの。
(5) プロ野球志望届提出以前に、プロ野球団のテストを受けたもの。
(6) 特定のプロ野球団に入団する旨を表示したもの。
(7) 日本学生野球協会の適性審査の認定を受けていない元プロ野球選手の混じっているチームとの試合に出場したもの。
第2条 当該年度、所属する都道府県高等学校野球連盟に登録された野球部員は、たとえ自分が所属するチームが敗れたのちでも、また退部しても、全国高等学校選手権大会(全国大会)が終了する翌日以降までは、一切プロ野球団との交渉を持ってはならない。なお、国民体育大会に出場するチームは同大会終了する翌日以降まで交渉を持つことはできない。

日本高等学校野球連盟の公式サイトの「高等学校野球部員のプロ野球団との関係についての規定」部分から抜粋)

つまり、プロ関係者と交渉してOKなのは、夏の甲子園の決勝戦が終わった次の日からです。ただ、監督やコーチ、保護者についての規定はありません。あくまで、「高等学校野球部員」に対して定められた規定です。

なので、プロのスカウトは、何か伝えたいことがある場合は、監督やコーチ、保護者に伝えますよね。ネットでは、「選手であっても”世間話程度”ならOK」との情報も流れていますが、一応、高野連に確認はとっておいたほうがいいでしょう。

プロ・アマ規定に気を使った選手、多田野数人の事例

プロ・アマ規定について、プロの選手が気を使った例として、僕は2012年のスポーツ報知の記事を思い出します。以下、抜粋します。

「日本ハム・多田野の元女房が監督!八千代松陰3年ぶり1勝 千葉大会」

黄金期を知る青年監督の下、八千代松陰が7回コールドで3年ぶりの夏1勝を手にした。 
今春から就任した大木陽介監督(32)は、日本ハム・多田野とバッテリーを組んで98年夏に甲子園に出場した間柄だ。 
「昨日、『頑張れよ』とだけメールが来ました。勝利を報告できます」と笑顔がはじけた。 

“多田野魂”で戦った。6月中旬の雨の日。学校の室内練習場に多田野が現れた。 
メジャー挑戦、帰国、戦力外通告からの復活―。練習中の選手と言葉を交わすことはなかったが、 
先輩のファイティングスピリットあふれる不屈の魂は、十分すぎるほどに伝わった。 
主将の門昴馬(かど・こうま、3年)は「とても尊敬しています」と目を輝かせた。 
09年以来、3年ぶりとなる夏の勝利。新米指揮官は「ずっと校歌を歌いたかったんです」と感慨深げに笑った。 
千葉の空に高らかに響いたナインの歌声は、きっとあこがれの先輩にも届いたはずだ。

(スポーツ報知 2012年7月13日の記事より抜粋)

この記事の途中部分に、当時、日本ハムの選手だった多田野は「練習中の選手と言葉を交わすことはなかった」と書かれています。

この記事を見たネット上の書き込みで、「ひとことぐらい挨拶してやれよ。プロ野球選手だからって調子にのるなよ」というようなものがありましたが、実は多田野選手は、プロアマ規定に気を使って声をかけなかったんですね。

新聞記者の方も、わざわざ「多田野は選手に声をかけなかった」と書くことで、多田野選手がプロアマ規定をしっかり守っていることをさりげなく読者に伝えています。

その一方、多田野選手は監督にはメールで声をかけていますね。

これがまさに、上であげたルールがわかる例です。つまり、「選手には声をかけてはダメだが、監督や関係者ならいい」というルールです。

米子東(よなごひがし)高校は、かつて元プロ野球選手が監督だった

ちなみに、1960年前後の米子東(よなごひがし)が強かった理由は、「プロの指導をあおいだから」という要素は確実にあります。後の記事で書く予定ですが、当時は、元プロ野球選手が米子東の監督をつとめていました。しかも2代続けてです。

このときはまだ、「プロ・アマ規定」がなかったので、自由にプロと交流できたんですね。そんな中、米子東は「交流」どころか、元プロ野球選手が「監督」になっていたわけですから、そりゃ、強かったのも納得です。

やはり元プロ野球選手ということになると顔が広く、監督のツテで関西の有力大学生を呼び寄せて米子東高校の練習に参加させていたようですね。それらの「有力大学生」たちは、ほとんど、後にプロに行く選手ばかりです。その中にはあの村山実投手もいました。

このように、プロの指導や、プロの人脈は高校野球の選手の能力を引き上げます。なので、「プロ・アマ規定」なんて、早くなくなってほしいと個人的には思っています。

現在は、「元プロ野球選手」が監督になりやすい環境になっている

ちなみに現在は、「元プロ野球選手」も監督やコーチになりやすい環境になっています。以前なら、「2年間は中学・高校教員としての勤務実績が必要」などの高いハードルがありました。

しかし、今は元・プロ野球選手でも3日間の「プロ・アマ研修」を受ければ高校生に野球を教える資格を取ることができます。

その「3日間の研修」を経て高校野球の監督になった元プロ選手の代表例は、金森栄治さんです。僕ら団塊ジュニア世代からは有名ですね。西武、阪神、ヤクルトで活躍し、特に「

珍プレー」番組によく出ることで知られていました。「デッドボールにしょっちゅう当たる人」ですね。もちろん、実力もたしかで、日本シリーズで大活躍しましたね。

その金森栄治さんは、2014年~2017年に金沢学院高校(石川)で監督を務めました。

また、中尾孝義さんも「3日間の研修」をきっかけに高校野球の監督になりました。中尾さんと言えば、中日と巨人でキャッチャーを務めたことで有名ですね。中尾さんは、2017年に専修大学北上高校(岩手)の監督に就任しました。

ちなみにこの中尾孝義さんは、今、甲子園で解説をしている米子東出身者の杉本真吾さんが高校生の頃、プレースタイルを参考にしていたそうです。そう、ラジオ解説で話していました。

・・・と、このように、少しずつ、元プロ野球選手が高校野球の指導にかかわっても大丈夫な雰囲気になってきています。実際、2015年の選抜に出場した米子北(よなごきた)高校も、選抜に向けた合宿で元プロ野球選手の指導を受けていましたね。

こんな風に、鳥取にもどんどん、元プロ野球選手が指導に来て、レベルアップをはかってほしいな、と思います。

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