高校野球の鳥取予選は、何勝したら甲子園に行けるの?

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甲子園まで何勝か

鳥飼です。

全国で一番、予選出場校の少ない(24校前後)鳥取県の高校野球について記事をいくつか書かせていただいています。

さて、今回は、そんな鳥取県では、いったい何勝すれば甲子園に行けるのか、について書きます。

鳥取県の予選は、いったい何勝したら甲子園に行けるのか?

結論から書きます。

シード校なら4勝。ノーシードなら5勝。

以上です。問題は、これを多いと見るか少ないと見るか、ですよね。他県の高校野球ファンから、「たった4勝くらいで甲子園行けちゃうの?」とネットでナメられることもあります。

ただ・・・

ほとんどの鳥取県民は、この試合数は「多い」と感じています。それには理由があります。

鳥取県の予選は、意外と勝ち上がるのが難しい

なぜ、ほとんどの鳥取県民は、「4勝か5勝で甲子園に行ける」状況を、「多い」と感じるのか。それは、鳥取県の予選は、意外と勝ち上がるのが難しいからです。

その証拠に、あなたは鳥取県で常連の高校野球チームを思い出せるでしょうか?

たとえば、和歌山なら、「智弁和歌加山」とすぐに言えますよね。奈良は、「智弁学園」「天理」とすぐに名前が出てきます。福井なら「福井商業」「敦賀気比」と即効で名前が出てきます。

ではなぜ、鳥取県の高校はすぐに名前が出ないのでしょうか?

もちろん、その理由のひとつは、このブログのテーマである「鳥取県代表」が弱いから、ということもあるでしょう。しかし、僕はもうひとつ理由があると思っています。それは・・・

毎年、甲子園に行くチームが違うから

です。当然ながら、毎年同じチームが出ていたら名前は浸透します。高知の明徳義塾、福島の聖光学院などは、毎年出ているために県名とセットで人々の頭に浸透しています。

しかし、鳥取県の場合はそうじゃないのです。毎年、違うチームが代表になります。その理由も後にこのブログで詳しく語っていきますが、ひとつ言えるのは、「研究されるから」ということがあります。

というのも、全国最小の予選出場校ということは、それぞれのチームにしてみれば、「ライバル視するチーム」も少ないということになります。

なので、前評判のいいチームはすぐに「打倒〇〇高校!」という風に意識される対象となります。そのため、研究されつくして夏の本番には意外と力を発揮できずに負ける、ということがよくあるのです。

山陰の暴れん坊時代の倉吉北も、予選を突破するのに苦労した

事実、鳥取野球史上、最強のチームだったと言われている80年代前半の「山陰の暴れん坊」時代の倉吉北も、実は鳥取県の予選を突破するのに苦労していました。

当時の鳥取県の予選出場校は、今よりももっと少ない「18校前後」でした。たった18校くらい、楽に予選を突破できそうなものですが、実はそうではなく、倉吉北のメンバーはインタビューで、「鳥取予選は、楽には勝てない」と語っていました。

ちなみにこの時代の倉吉北は、「メンバーのほとんどが野球留学生」というチーム編成です。今では珍しくありませんが、当時はこういうチームはほとんどありませんでした。

当時は、野球留学生がいたとしても、せいぜい、チームの中に数人いる程度が普通でした。そんななか「ほとんどが野球留学生」というチーム編成ならば、楽に勝てそうな気がするものですが、鳥取県予選はそうではなかったのです。

現在の鳥取県内の、「野球留学生中心のチーム」も、予選突破には苦労している

これは今も同じで、現在、鳥取県内で野球留学生中心のチーム編成をしているのは、鳥取城北、倉吉北、米子北、米子松蔭があげられます。

しかし、このどのチームも、鳥取県予選を楽に突破するという感じではありません。特に、鳥取城北は練習環境が抜群で、関西の名門硬式チームの選手が多く入学しています。

なので、試合前のノックなどを見る限りでは、鳥取城北は鳥取県内の他のチームに比べて動きのキレが全然違っており、圧倒的な実力差があるのは明らかですが、それでもやはり、試合になると楽には勝てません。

鳥取県の予選には、「捨て試合」がない

そしてもうひとつ、鳥取県の予選が出場校の少なさのわりに突破が難しい理由として、「捨て試合がない」ことがあげられます。

つまり、予選出場校が少ないということは、言い換えれば、「どの高校にも甲子園に行けるチャンスがある」ということです。

これがもし、愛知のように190校近くも予選出場校があったら、ちょっとチーム力が劣る高校は、「本気で甲子園を目指そう」という気にはならないかもしれません。

しかし、鳥取のように「たったの24校前後」の場合は、「ちょっとチーム力が劣る」くらいでは、そう簡単に甲子園の夢はあきらめないのです。なので、選手もまわりも、本気で甲子園を狙ってきます。

そういう「本気」な気持ちというのは、当然ながら試合の大事な場面で力を発揮します。

事実、その年の「有力チーム」が、試合中のちょっとした気のゆるみのせいで格下のチームに逆転されることは鳥取県の予選では非常によくある、まさに「あるある」なのです。

たいてい、そういう展開に持ち込まれたときは、その「有力チーム」は、単なる気のゆるみだったものが今度は「あせり」にかわります。そして、格下のチームの投手を相手に力んでしまって全く打てず、そのままゲームセットとなります。

どんな分野でもそうですが、「追う者」は「追われる者」よりも気持ちでは有利です。

で、鳥取県の場合は、「追う者」が本気になってかかってくるので、「追われる者」がその気迫に押されて負けることがよくあるのです。

鳥取県の予選は楽じゃないからこそ、鳥取県民は、試合数を「多い」と感じる

まあ、他県からは「たったの4勝か5勝で甲子園行けるのかよ。楽勝だな」と揶揄されることもある鳥取の予選ですが、それでも鳥取県民がその試合数を「多い」と感じるのは、以上の事情があるからなのです。

つまり、有力校が研究されること、そして捨て試合がなく、一試合一試合の内容が濃いことですね。

たとえば僕が、その年に応援しているチ―ムが勝ち上がるのを見守るときの気持ちは、「まだ勝たないけんだかいや(まだ勝たないといけないのか)」です。

僕はたいてい、応援しているチームが2勝したくらいから、胸がざわざわとしはじめます。「あと少しで甲子園!」という気持ちがありつつ、「まだ2勝、3勝しなければならない」という気持ちもあるという、複雑な気持ちです。

これがもし、他県の場合は、2勝くらいでは、まだ胸はざわつかないでしょう。全然油断できる状況ではなく、きっちりと勝ちを重ねていかなければならない、と冷静に判断できます。

しかし、鳥取県予選の場合は、「たったの2勝」したくらいで、甲子園がチラついてきますから、気持ちがあせってくるのです。その一方で、いくら鳥取県といえども、「たったの2勝」したくらいでは、現実的には甲子園はまだまだ先です。あと最低2勝はしなければなりません。

そういう、鳥取県の予選特有の心理状態が、「番狂わせ」を生む要因になっているのです。

まとめ

今回は、鳥取県の予選は何勝しなければならないのか、というテーマから広げて、「鳥取県予選は意外と勝ち上がるのが難しい」ということについてふれてみました。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。鳥取の野球を盛り上げていきましょう!

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