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鳥飼です。
今回は、僕が鳥取代表の「強烈な当たりのホームラン」で印象に残っている3本のうち、1本をご紹介します。
前回は、八頭高校の綾木進一選手のホームランをご紹介しました。今回は、2008年の鳥取西の小畑彰宏選手のホームランです。
~~~ 目次 ~~~
2008年夏、鳥取西の小畑彰宏選手のホームランの動画はコチラ
まずは、2008年夏の鳥取西の小畑彰宏選手のホームランです。以下のyoutube動画の最初に出てきます。
10年ぶりに見ましたが、記憶どおり、やっぱり強烈ですね~。
木更津総合(東千葉)の田中優投手から打ちました。田中優投手はドラフト候補です(後に明治大に進学)。
この試合は鳥取西の鈴木大投手が快投を見せていて、木更津総合をしっかりと抑えていました。一方、鳥取西の方も木更津総合の田中優選手に手も足も出ない状態でした。
均衡した状態で試合が続いていましたが、あえていえば鳥取西が劣勢でした。なぜなら、鳥取西の場合は、「ピンチを迎える→しのぐ」の繰り返しだったからです。
それに対して木更津総合の田中優投手は、ピンチすらなく、しっかりと鳥取西を抑えていました。
木更津総合の田中優投手は、小畑彰宏選手のホームランに青ざめた
しかし、途中、その田中優投手の顔が青ざめたのが、まさにこの「小畑彰宏選手の強烈なホームラン」だったのです。
テレビの画面越しにも、明らかに田中優投手が動揺しているのがわかりました。表情があせっていましたし、何より、投球がビクビクしたものに変わりました。
田中優投手は、ホームランを打たれるまでは「しょせん、鳥取代表でしょ?」という心理はあったと思います。左腕から大胆なコースへ、自信ありげに投げ込んでいましたから。
しかし、小畑彰宏選手のこのホームランの後は、木更津総合の田中優投手は弱気になっていました。しかも、回の先頭に打ったホームランであり、ノーアウトの状態でした。
ただ・・・
鳥取西はこのチャンスを生かしきれなかったんですよね・・・。実にもったいなかった。
田中優投手は明らかに弱気になっているのですから、鳥取西はガンガン攻めることもできたはずです。でも、ミスが重なってチャンスをつぶし、これ以上得点を取ることができませんでした。
小畑彰宏選手は、実は投手。
ちなみにこの小畑彰宏選手。2008年夏の大会では、鳥取県予選から甲子園まで、ライトとして試合に出ていました。ですが、本当は投手です。それも、一年生のときからエースでした。
もともと、中学時代は大阪府の準硬式野球大会に投手として出場し、優勝したほどの実力の持ち主です。お父さんが鳥取県出身の方という縁もあって、高校は鳥取西高校に進学しました。
鳥取西高校は公立なので、県外から選手を迎え入れるということはほとんどありません。なので、大阪から来た投手で、しかも準硬式で優勝したほどの人、ということで期待が高まっていました。
地元の新聞、テレビでもクローズアップされていましたね。
小畑選手は、期待されながら、一年生のときから苦戦
しかし、一年生の夏の鳥取予選の初戦で、八頭高校に洗礼を浴びてしまいます。八頭高校は「鳥取をナメるな」とばかりに一年生の小畑彰宏投手を打ち崩しました。
小畑投手が2年生の夏の大会も、鳥取を制することができませんでした。たしか、準々決勝で倉吉東に負けたような気がします(記憶があいまいなので、間違っていたらコメントをお寄せください)。
で、2年生の秋の大会。つまり選抜出場を賭けた大会ですが、小畑投手をエースに鳥取西は中国大会へと進み、広島県の高陽東を5-0で破ったものの、選抜出場はかないませんでした。
そういうタイミングで、いよいよ最後の挑戦、つまり3年夏の選手権にのぞんだわけです。
しかし、小畑彰宏選手はライトとしての出場でした。理由は「怪我」ということでしたが、イップスにかかっていたという説もあります。
鳥取大会で小畑選手がエースにならなかったことで、結果的に他校のスキをつけた
これは僕の個人的見解ですが、小畑彰宏選手が投手として大会に出なかったことで、鳥取西は鳥取予選を制覇できたような気がします。なぜなら、鳥取県は出場校数が少ないため、「各校がお互いを徹底的にマークしあう」という風潮があるからです。
鳥取県では、「プロ注目の選手」は甲子園に出られない
鳥取県の特徴として、「プロ注目の選手がいるチームは甲子園に出られない」というものがあります。これは、鳥取県の高校野球を毎年見ている人は嫌と言うほど感じることでしょう。
事実、鳥取県の高校出身でプロ野球選手になった人は、甲子園に出ていない人が非常に多いです。たとえば、川口和久(広島→巨人)、能見篤史(阪神)、藤原良平(西武)の三名(いずれも鳥取城北出身)は甲子園に出ていません。
他には、米子工業出身の角盈男(巨人→日ハム→ヤクルト)、由良育英(現・鳥取中央育英)の小林繁(巨人→阪神)、境の米田哲也(阪急など。歴代2位の通算350勝)も甲子園を経験していません。
この他、プロには行かなかったけど、高校時代は「プロ注目」として地元メディアで報道された選手は、甲子園を逃す傾向があります。これも全て、「徹底的にマークされる」からです。予選出場校が24校くらいしかありませんから、他校としてもマークしやすいので、必然的にそうなります。
で、小畑彰宏投手は、典型的な「マークされている」存在でした。小畑投手が鳥取県で投げている様子を見ると、のびのびとした印象ではありませんでした。投げにくく思っていたのでしょう。
(なお、これは後の記事でも触れますが、「投げにくい」雰囲気があったのは小畑投手のフォームにも問題があったと思います)
鳥取県の各チームは、「小畑対策だけ」をしていた。だから・・・
そんな中、他校としては、「鳥取西は当然、エース小畑を中心としたチームを作ってくる」と思い込んでいました。なので、「小畑対策」だけをしたわけです。実際、夏の予選の前の日本海新聞の各校監督の取材で、鳥取西の西村寿之監督は「絶対的エース、小畑を中心として戦っていく」と答えています。
ところが、フタをあけてみると小畑彰宏選手はライトにまわり、全く投げませんでした。投げたのは鈴木大投手です。なので、他校は完全に対策不足だった雰囲気があります。
もちろん、単に対策不足だっただけではありません。鈴木大投手もかなりすごい投手だったからこそ、他校は打てなかったわけですが・・・
それにしても、2008年の鳥取西は、小畑彰宏投手とは別に、もうひとりの投手、「鈴木大」をひそかに育てていたわけですね。
ちなみにこの鈴木大投手。前述のとおり、甲子園でも快投を見せました。左腕から繰り出すストレートが素晴らしかったですね。試合後は、取材が殺到したそうです。
まとめ
あなたは、小畑彰宏選手のホームランを見て、どう感じましたか?僕は、鳥取代表にはあまり見られない、「力で強引に持っていく」ホームランだなあ、と感じました。
小畑選手は一年生のころから地元メディアで注目されていましたので、当然、僕も活躍を期待していました。実際、球速もあり、全国レベルの選手でした。
でも、試合ではなかなか力が発揮できずにいました。そんな中、バッティングの方で魅せた、という感じでしたね。1年生のときから耐えに耐えたものが、一気に噴き出したという印象のホームランです。
最近は、鳥取県の高校野球も一年生のころから注目される選手が増えてきています。特に、鳥取城北高校の台頭によって、県外の優秀な選手が来ていますからね。
もちろん、いくら一年生のころから注目されていても、実際に大会に出てみると活躍できない、ということもあると思います。そういう意味では、辛いことも多いでしょうけど、小畑選手のように、耐えに耐えて、自分の力を発揮してほしいな、と思います。
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