甲子園で鳥取代表が弱い理由③ 「鳥取県は、それなりに栄えている」と県民は思っている(現実を直視していない)から。

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どうも、鳥飼です。

今回は、「鳥取県民は鳥取県がそれなりに栄えていると思っている」ということについて書きます。これは、鳥取県民ならみんな、「そうそう!」と感じる感覚でしょう。他県の人には、こういう感覚はありません。

説明しづらいのですが、あえて言うなら・・・

「鳥取県が日本一、田舎だということはわかっている。でも同時に、『鳥取よりもっと田舎はたくさんあるはずだ』とも思っている」

という不思議な感覚です。で、これが「高校野球の鳥取代表が弱い理由」に微妙にからんできていると僕は思っています。今回は、そこについて説明していきます。

マツコ・デラックス「月曜から夜更かし」の”スタッシー”こと石原佳那子さんを見て感じたこと

マツコ・デラックスさんがMCの「月曜から夜更かし」を見ていると、石原佳那子さんという女性が出ていました。番組ではスタッシーというニックネームがつけられています。

で、この女性が言ったことに、僕は思わず上に書いた「鳥取の感覚」を思い出してしまいました。

「米子東(よなごひがし)高校出身です。」

という言葉ですね。軽く米子東のアピールっぽいことを話していたわけです。それに対して、番組のナレーションで、

「それは何の自慢にもならない。」

と突っ込まれていました(;^_^A まあ、鳥取の人にありがちなことです。つまりこういうことです。

「鳥取の高校は、全国では学力も規模も、スポーツの実績も決して高くはないことはわかっている。でも、それでもやっぱり、自慢できるくらいの雰囲気はあるはずだ。」

と思っているわけですね。もちろん、これはバラエティ番組です。なので、おそらく石原さんはネタで言ったのでしょう。もともと、マツコさんはなぜか鳥取県に興味を持っている人です。いろんな番組で「鳥取LOVE発言」をしています。

実際、マツコさんの鳥取マニアぶりはすごくて、単に観光地とかそういうことだけではなく、鳥取県人が持っているいろんな「感覚」もよ~く知っています。

そういうことから、番組ではその「感覚」をイジってみようと思って、あえて石原さんにあんな発言をさせたのでしょう。

なお、鳥取県外の人には全くわからないでしょうが、「米子東高校」というのは、鳥取県内ではかなり人気がある高校です。米子市で学力がトップで、高校生クイズで優勝経験もあります。また、甲子園出場回数も多く、いわゆる甲子園の「レジェンド校」のひとつでもあります。

「レジェンド校」というのは、高校野球(全国中等学校優勝野球大会=甲子園大会)が1915年に始まってからずっと予選に出場し続けている「皆勤校」のことです。全国で15校しかありません。

そうしたことが背景となって、鳥取県内では米子東高校がとても人気があるわけです。ちなみに、同じようなイメ―ジの高校が倉吉市、鳥取市にもひとつずつあります。それについては、このブログで後に説明していく予定です。

※注 鳥取県民に朗報!2018年11月3日、米子東が秋の中国大会で決勝に進出しました。つまり、来春の甲子園選抜大会に出場が当確しました。広島2位の市立呉高校との準々決勝で、延長タイブレークの末の勝利です。

ちなみに、米子東の最後の甲子園出場は、1996年春です。

鳥取県民は、鳥取県が意外と栄えていると思っている。

以前の記事でも書きましたが、高校野球の鳥取代表が弱い理由のひとつは、各チームが、「甲子園で勝つことよりも、鳥取県内を制覇することに最大の関心を持っている」ことだと僕は思っています。

では、なぜそのような考えになるのでしょうか?

それは鳥取県民が、この記事の冒頭で書いた感覚を持っているからです。

つまり、「鳥取県民は、鳥取県がそこそこ栄えていると思っている」という感覚です。以下、それについて説明します。

鳥取県民は、「体感人口密度」を高く感じている。

鳥取県の「人口」は全国で最少であることはこのブログで何度も書きました。では、「人口密度」はどうでしょうか。それは、

全国で37位

です。これは「意外に高い」と言えるでしょう。なにせ、鳥取よりも人口密度が低い県が、10県もあることになりますからね。で、これは僕の感覚なのですが、さらに数字以上に鳥取県は「体感人口密度」は濃いような気がします。

鳥取県内では、知人によく遭遇する。

実際、鳥取に住んでいるとよくわかりますが、「知っている人」にかなりの確率で会います。なので、ショッピングモールに行くと、そこら中で「あら、〇〇さんじゃないですか。こんにちは~」みたいな挨拶が交わされています。

つまり、同じ会社、学校の人などとよく会うんですね。「あいさつを交わさない程度の知り合い」も含めたら、もっともっと「遭遇率」は上がります。これは、人口密度がある程度ないと起こりえない現象です。

ここで僕が言いたいことは、これがために鳥取県民の潜在意識の中に、「人口密度がそこそこ高い(都会ほど高くはないにしろ)」という感覚が組み込まれている、ということです。

つまり、以下のような思考の流れですね。

①「外出すると、よく知り合いに会う」

②「これは、人が集まっているからでしょ」

③「人が集まるということは、人口密度はそこそこ高いってことでしょ」

と。で、この「人口密度がそこそこ高い」という錯覚を起こさせる原因は、鳥取県の地理的構成にもあると僕は見ています。

鳥取県の街の配置は、ドラクエ状態である。

僕が鳥取県の街を見てよく思うのが、「ドラクエみたい」ということです。ドラクエ、つまりRPGゲームのドラゴンクエストですね。ドラクエの世界って、街と街が離れていますよね?ひとつの街を出ると、広い草原をひたすら歩き、やっと次の街にたどり着く、というような。

鳥取も、同じような感じがするのです。

たとえば、他県だと、街と街がつながっています。僕はドライブや自転車旅行が趣味なので、いろいろな街と街を結ぶ道路を走った経験があります。他県を走ると、大きな街を抜けて山道になっても、人が住んでいる雰囲気があります。人家が常にあります。

ところが、鳥取の場合は、そういう感じはありません。「人が住んでいるところ」と、「住んでいないところ」は、はっきりと分かれている感じがします。それがまるで、「ドラクエ」のように感じられるのです。それを裏付ける証拠として、鳥取県の「市」の少なさがあげられます。

鳥取県には「市」が4個しかない

いわゆる「市町村」のうち、人口が多いのは「市」ですよね(厳密な定義はここでは割愛します) で、鳥取県内に「市」が何個あるか、というと・・・

「4個」

です。これは、全国最少です。

鳥取の次に「市」が少ない県は、「島根・徳島・香川」ですが、これらの県でも「市」は「8個」あります。

で、全国的に見ると・・・

都道府県の平均の「市」の数は、「17個」です(2018年4月1日現在。参照サイト:「都道府県市区町村」)。

つまり、普通の県は、「市」が17個はあるのに、鳥取は4個しかないのです。ここからわかることは、鳥取県民は、少ない「市」の中に、固まって暮らしている、ということです。なので、鳥取の人は、数値以上の「人口密度の高さ」を感じている、ということになります。

で、人口密度を「そこそこ高い」と感じているということは、「鳥取県は捨てたもんじゃない。それなりに栄えているよ」と思っているということになります。

鳥取県民には「鳥取県は栄えている」と信じたい気持ちがある

もちろん、この思いには、「鳥取はそこそこ栄えていると信じたい」という希望的な感情もかなり含まれています。実際、鳥取県民は、人口や経済的な数値などから、鳥取は日本一の田舎であることはわかっています。僕も鳥取県人として悔しいですが、いろいろな証拠を突き付けられると、それは認めざるをえません。

でも、「それを認めたくない」という感情は確実にあります。また、そういう風に思いたくなるような根拠もあります。

たとえば、「日本一田舎だと思う県トップ10」みたいなものが昔からいろいろなメディアで出されていますが、そういうものに鳥取は出てきません。たいていは、栃木、茨城、青森、島根といった県がランクインします。

正直なところ、鳥取は存在感がないから名前すら出てこないというのが実情だと思いますし、それも県民はうすうすわかってもいます。ですが、それでも「田舎だと思われてなくてほっとした」という気持ちでいたいのです。

鳥取県民は、鳥取県内のことしか関心がない。県外でどんなに楽しいことがあっても、眼中にない。

また、鳥取県民は鳥取県内のことにしか関心がありません。県外でどんなに華やかなイベントが行われたとしても、うらやましいとすら思いません。

むしろ、うらやましいと思う対象は県内にいます。職業でいえば、鳥取県内でステイタスがあるのは公務員です。なので、民間のサラリーマンは公務員をうらやましく見たりもします。

他には、住む場所でも多少、ステイタスの違いはありますね。特に僕が子供の頃は鳥取市街地に住んでいる人と郊外に住んでいる人の間には差があったような気がします。

郊外には高度経済成長期にできた住宅街がたくさんありました。そういうところに住んでいる人は新築の綺麗な家に住んでいた一方で、ステイタス的にはやや下に見られていたような気がします。

その最大の理由は「しょせん住宅街」というような見られ方にありました。実際、その周辺は店も充実していない印象で「この辺に住んでる人は、いったいどこで買い物してるんだ?」と言いたくなるような感じでしたからね。

(ただ、最近は、むしろ鳥取市街地がシャッター街になり、そのかわりに郊外に大手ショッピングモールができました。そのため、以前ほどのステイタスの差はなくなってはいます)

鳥取県は、各学校のカラーの違いが濃い。

この他には、学校の違いがあります。小学校はあまりカラーに差はありませんが、中学校くらいからは特徴が出てくる印象です。公立中学であり、選べないので、普通に考えたら差は出ないと思うのですが、それでもカラーに差があるので不思議なもんです。

鳥取大学付属中学校は、上流階級なイメージ

その中でも特別な位置にいるのは鳥取大学附属中学校です。この中学だけは、「受験して自分の意志で入る中学校」です(2018年現在は、受験して入る中学は他にもできている。ただし、どこもまだ規模は小さい)。

ここは合格しないと入れないので、他の公立中学とは明らかな違いがありました。あまりにも違いすぎて、他の同年代の子と交流がほとんどないほどです。

なので、そういう状況を嫌って、「受験すれば受かるけどあえて鳥取大学付属中学には行かない子」もいましたね。ステイタスよりも、公立中学でたくさんの友達を作ることを優先する子がそういうタイプでした。

最近は、受験して入る私立中学が充実してきたので、鳥取大学付属中学だけが特別だという雰囲気が薄くなってはいます。しかし、公立中学含め、なんとなくそれぞれのカラーがあることは変わりありません。

<鳥取県への移住・転校を考えておられる方へのメモ>

■なお、鳥取大学付属学校は、なぜか「高等部(高校)」がありません。児童(生徒)は鳥取大学付属幼稚園→鳥取大学付属小学校→鳥取大学付属中学校と進学していきます(この記事で触れたとおり、中学校から受験して入る人も多くいます)。

■鳥取大学付属中学校の卒業生の多くは、高校は鳥取西高校に進学していきます。ただ、このようなことでは学習効率がよくないということで、「鳥取大学付属高校」を作ってはどうか、という案を提唱する人もいます。

■鳥取大学付属学校に幼稚園から通っている子は、小学校、中学校も含めて近所の子と接点がないため、孤立するというデメリットがあります。これは近所の子に嫌われているのではなく、単に接点がないのでお互いに一緒に遊ぶきっかけを持ちにくいということです。したがって鳥取大学付属学校の児童・生徒は近所の子と濃く付き合うというより、広範囲の子と分散的に人間関係を築くイメージです。

鳥取県は、「高校」のカラーの違いが際立っている。だから野球の鳥取予選が盛り上がる。

で、このカラーの違いは、高校になるともっと濃くなってきます。高校の場合はまさに自分の意志で進学先を決めるわけですから、生徒の個性の違いがはっきりと出てきます。鳥取県の高校野球は、そういう「カラーの違う高校」が競うからこそ、部の関係者はもちろん、県民の関心も非常に高いわけです。

このように、鳥取県民は鳥取県内のことに一番、関心があります。しかし、県外のことは本当に無関心です。もちろん、僕も鳥取県の人間ですから、鳥取県のことに一番、関心があります。今は県外に住んでいますからさすがに鳥取県だけを見ているわけではありませんが、鳥取に住んでいたころは県外のことなんて眼中にありませんでしたね。

新聞・テレビはお隣の島根県と一緒。「山陰中央テレビ」「山陰放送」「日本海新聞」など。

そういう心理を示す例として、「新聞・テレビ」があります。鳥取県内の新聞とテレビは、鳥取のことだけを報じるのではありません。鳥取県とお隣の島根県でセットになっています。で、この新聞・テレビを「どのように見るか」で、鳥取県民が鳥取県のことにしか関心がないことがわかります。

島根県とセットになっているわけですから、島根のニュースもたくさん、取り扱われます。しかし、鳥取県民は、鳥取県のニュースしか見ません。つまり島根県のニュースは飛ばして見ているわけです。こうこうことからも、鳥取県民が鳥取県のことにしか興味がないことがわかります。

ちなみに、鳥取・島根のローカル新聞は「日本海新聞」や「山陰中央新報」という名前です。「鳥取新聞」というものはありません。テレビ局も、「日本海テレビ」とか「山陰放送」というような「地域をぼかした名前」です。「鳥取放送」というテレビ局はありません。

なぜわざわざ島根県とセットになっているのかは謎ですが、おそらく鳥取県だけのメディアだと資金が足りないからかなと個人的には思っています。また、鳥取県内の話題だけだと、報じるだけの話題がないというのもあるかもしれません。

お隣、島根県の「谷繁元信」フィーバーに、鳥取県民は全く関心を寄せなかった。

僕の場合も、多くの鳥取県民と同じく、島根県のニュースは飛ばしていました。鳥取県の話題になったときにだけ、身を乗り出して関心を寄せるような感じです。

まわりの友達も同じような感覚を持っていました。たとえば僕が学生の頃、お隣の島根県の江の川(ごうのかわ)高校が谷繁元信選手の活躍でベスト8に入りました。当然、ローカルニュースで取り上げていましたが、僕もまわりの友達も無関心でした。

(注: 江の川高校は、現在の石見智翠館(いわみちすいかん)高校です)

もちろん、谷繁選手の地元のニュース(島根・鳥取共同マスコミ)の取り上げ方は大々的でした。「ヒーロー出現!高卒ドラフト確実!」みたいな感じでしたからね。しかし、僕は、谷繁選手を全国区のヒーローとしてすごいと思いはしましたが、友達と谷繁選手の話題で盛り上がった記憶はありません。

友達も僕も、高校野球で一番関心があるのはやはり「鳥取県」の高校なのです。全国区の高校のことは、普段からあまり話題になりませんでした。たとえるなら、サッカーのワールドカップで日本代表が負けると、日本人はそこから先のトーナメントの行方に興味がなくなりますよね?欧州や南米のスター選手は尊敬の目で見ますが、それは日本代表に向ける関心とはまた違ったものです。

ちょうど、そんな感じです。

鳥取代表は、毎年、初戦で負ける。結果的に、鳥取県民は甲子園の上位クラスの試合を見ない。

「鳥取県民は、他県の情報に興味がない」

ということは、高校野球でいえば、鳥取県の高校の試合しか見ない、ということになります。と、いうことは、ですよ?

鳥取県代表といえば、ほぼ毎年「初戦敗退」しているわけです。なので、鳥取県民は甲子園のベスト8、ベスト4などのレベルの高い試合はほとんど見ていない、ということになります。

そのため、鳥取県民の中で高校野球のレベルは、「鳥取代表」が基準値となっているわけです。

これでは、なかなか勝てません。

他県の場合は、ベスト8以上にしょっちゅう入りますから、県民もその試合を見ます。それに加えて、自分の県の試合ばかりに注目するのではなく、いろいろな県の強豪校の試合も興味を持って見ますから、「基準値」が高いのです。

県民が野球を見るときの「基準値」が高いとどうなるか?

上で書いたとおり、他県の人は、高校野球を見るときの「基準値」が高いです。するとどうなるか、というと、もし甲子園で自分の県の高校がレベルの低い戦いをしたら、「恥ずかしい」という感情が生まれるのです。

それは県全体の空気となって広がっていき、最終的には監督や選手のもとに届きます。

なので、各高校の野球部は、そういう「恥ずかしい」試合をしないために、レベルの高い野球をしようという気持ちになり、目標を高くもって練習に取り組むのです。

だから、他県の高校はレベルが低いままで毎年、初戦敗退、ということにはならないのです。

一方、鳥取県の場合は・・・

しかし、鳥取県の場合は、毎年、初戦敗退します。しかも鳥取県民は鳥取県の高校の試合しか興味がないので、「初戦敗退した鳥取代表の試合」だけを毎年見ていることになります。

だから、鳥取県内の高校野球ファンの雰囲気としても「まあ、高校野球のレベルって、こんなもんだよね。今のままで問題ないよ。」という程度で広がっていきます。

当然、その雰囲気を感じ取る各チームの監督、選手も、「今の基準値のままでいいかな」という気持ちで練習に取り組みます。

だから、なかなかレベルが上がっていきません。で、初戦敗退を毎年、繰り返すことになるのです。

まとめ

鳥取県民は、体感人口密度がそれなりにあることからくる鳥取の規模感に満足している点と、鳥取県内にしか関心がないというふたつの理由で、県外との比較をしません。

だから、鳥取代表が甲子園に出ても、全国で上位に行くことまでは望みません。その雰囲気が、鳥取の代表がなかなか勝てない要因のひとつになっています。

やはり、他県のレベルの高い試合、つまりベスト8やベスト4の試合も見るべきでしょう。そうすれば、鳥取県代表の野球の基準値が、いかに問題があるかがわかると思います。

その思いは確実に監督や選手に伝わります。そうした空気が広がっていくことで、鳥取の野球のレベルは、じょじょにアップしていくはずです。

もちろん、鳥取代表が弱い理由はこれだけではありません。他にもさまざまな要因があります。そこは、このブログで語っていきますね。

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